古代の火山が育んだ「甘い奇跡」 ベトナム・ロンカインの果樹園へようこそ

ベトナム・ロンカインの果樹園で、夏の訪れとともに真っ赤に熟したランブータンが木いっぱいに実る風景
夏の訪れとともに、ロンカインの果樹園は、木で完熟したランブータンの鮮やかな赤色に彩られます。

都会の喧騒を離れ、もぎたての果実をその場で味わう――。それは、ベトナム・ホーチミンなどの都市部に暮らす
人々にとって、最高の夏の愉しみとして親しまれてきました。
「ロンカインって何があるの? なんで夏になるとみんなそんなに夢中になって通うの?」と、不思議そうに尋ね
る人がいます。この大地の恵みを受け、豊かな自然の中で生まれ育った私は、胸を張ってこう答えます。
「一度おいでよ。かつての広大なロンカインの面影を感じて、赤土(玄武岩質土壌)が育んだランブータンやドリ
アンの極上の甘みを味わえば、誰もがこの場所の虜になる理由がきっと分かるから」
今日、私は遠く離れた日本の福岡にある、静かな和風の家からこの記事を書いています。故郷を離れた一人の人間
として、乾燥した数字やデータではなく、温もりある地元の言葉で、愛するロンカインの物語をお届けしたいと思
います。

ロンカインの過去と現在:少し「不思議」で愛おしい歴史の歩み

もし、1975年以前の古い地図を開く機会があれば、きっと驚かれるはずです。現在のロンカインはドンナイ省に
属する一地方都市(市)ですが、当時は一つの独立した、広大で誇り高き「ロンカイン省」でした。
1956年10月22日、ベトナム共和国の時代に誕生したロンカイン省は、現在の周辺地域を包み込む広大な土地を有
していました。その中心地(省都)が置かれたのが春禄(スアンロク)――現在の活気あふれるロンカイン市の中
心部にあたります。当時はスアンロク、定館(ディンクアン)、検新(キエムタン:現在のザキエム地域)といっ
た郡を擁し、歩いても歩いても終わらないほどの広さを誇っていました。
しかし、1975年を境に、行政区画は大きな変革を迎えます。1976年2月、当時の3つの主要な地域であった辺和
(ビエンホア)、ロンカイン、そしてバリア(ブンタウを含む)が合併し、巨大な「ドンナイ省」が誕生しまし
た。時代の荒波の中で、のちにバリア=ブンタウ省は再び独立していきましたが、ロンカインの魂はドンナイ省に
残り続け、今日でも省の東部における文化、歴史、地理の特別な中心地として輝きを放っています。
だからこそ、私たちロンカインの人間は、胸の奥にそっと誇りを抱いているのです。その名は単なる地図上の記号
ではなく、人々の記憶と歴史が今も脈々と流れる証なのです。

数百万年前の火山が遺した「奇跡の赤土」

ベトナム・ロンカインの豊かな果樹園と、その実りを育む数百万年前の古代火山由来の赤い玄武岩質土壌の風景
実は、現在のロンカインの豊かな果樹栽培を支えているのは、数百万年前の古代火山が残した赤い玄武岩質土壌であることは、あまり知られていません。

今では緑豊かな果樹園が広がるロンカインですが、その驚くべき豊かさは、数百万年前にこの地にあった古代の火
山がもたらした「玄武岩質(バザン)の赤土」によって育まれていることを知る人は、そう多くありません。
ここを訪れる観光客はもちろん、地元の人ですら気づいていない地質学的な秘密。それは、私たちが「眠れる火
山」の上で暮らしているということです。
心配はいりません。これらの火山は数百万年前にその役割を終え、今は深い眠りについています。しかし、永遠の
眠りにつく直前、火山は大地に熱い溶岩を流し込みました。それが気の遠くなるような歳月をかけて風化し、驚く
ほど肥沃な赤土の層へと生まれ変わったのです。
ロンカインのバウセン(Bàu Sen)地域を車で走っていると、お年寄りが遠くを指さして「あれが赤山(ヌイ
ドー)だよ」と教えてくれることがあります。そう、あの赤山こそが、先史時代の火口の跡なのです。今では煙も
溶岩も消え去り、山全体がみずみずしい果実を実らせる美しい緑の衣をまとっています。
さらにかつての省境であったディンクアンやタンプーの方面へ足を延ばすと、地中深くへと続く「コウモリ穴
(Hang Dơi)」と呼ばれる溶岩洞窟に出会います。これは東南アジア最大級の長さを誇る溶岩洞窟システムとし
て、科学者たちからも注目されています。また、ザキエムの畑の間には、黒く光る玄武岩の岩丘が点在していま
す。この唯一無二の地質こそが、他のどこにも真似できない、ロンカインのフルーツの極上の味を創り出している
のです。

南部の「フルーツの都」で絶対に外せない至高の3大果実

「良い土地には鳥が集まる」と言いますが、ロンカインでは「良い土地には甘い果実が実る」と言います。火山の
恵みを吸い上げ、高原特有の豊かな太陽と風を受けて育った果物たちは格別です。収穫期(旧暦の5月から8月頃)
に訪れたなら、絶対に味わってほしい「王・王妃・王女」のトリオをご紹介します。

1. ロンカイン産ランブータン:シャキッとジューシー、上品な甘み

私たちの最大の誇りであり、この地域で初めて地理的表示(GI)認証を取得したのがランブータンです。「ラン
ブータンなんてどこでも買える」と思うかもしれませんが、ロンカインのものは一味違います。高台にあるため水
はけが良く、熟すと燃えるような赤色になります。皮を剥けば、中から現れるのは水分でベタつかず、引き締まっ
た半透明の果肉。口に運ぶと、シャキシャキとした小気味よい食感とともに、上品で濃厚な甘みが広がり、いくら
でも食べられてしまいます。

ベトナム・ロンカイン産の真っ赤なランブータンと、完熟して黄金色に輝くドリアンの果肉のクローズアップ写真。
シャキシャキとした食感のランブータンと、黄金色の濃厚なドリアン。訪れる人の心を掴んで離さない「王と王妃」のコンビ。

2. ロンカイン産ドリアン:濃厚でクリーミーな至福の味わい

火山の赤土で育った「Ri6」や「タイドリアン」は、鶏の脂のように美しい黄金色の果肉をつけます。夕暮れ時、
ビンロック(Bình Lộc)やバオクアン(Bảo Quang)の集落を通り抜けると、風に乗って完熟ドリアンの芳醇な香

りが路地の隅々まで漂ってきます。クリーミーでコクがあり、まるで蜜のように甘く濃厚なその味わいは、一度食
べたら忘れられない魅惑の味です。

3. トゥーヌー・ジャックフルーツ(ミット・トー・ヌー):他に類を見ない魅惑の香り

一般的なジャックフルーツより小ぶりですが、その実力は侮れません。熟すとその甘い香りは何十メートルも先ま
で届くほど。ロンカインのトゥーヌーを食べる最大の愉しみは、皮に縦の切れ目を入れて、ヘタをそっと持ち上げ
る瞬間です。すると、黄金色に輝く果肉の房が、まるでブドウの房のように一度に美しくきれいに剥がれ落ちま
す。口に放り込めば、とろけるような甘さと濃厚なコクが口いっぱいに広がります。

縦に切れ目を入れたトゥーヌー・ジャックフルーツのヘタを持ち上げ、芯についた黄金色の果肉の房が一丸となって現れる瞬間の写真。
ヘタをそっと持ち上げるだけで、黄金色に輝く甘い果肉の房が美しく現れる、トゥーヌー・ジャックフルーツの醍醐味。

故郷からの招待状

もし日々の暮らしの中で、都会の喧騒や排気ガスに少し疲れてしまったなら、ぜひロンカインへ旅に出てみてくだ
さい。朝露に濡れた真っ赤なランブータンを自分の手でもぎ取り、樹齢を重ねたドリアンの木陰に座って、地元の
お年寄りが語る遠い昔の物語に耳を傾ける。そんな贅沢な時間がここにはあります。
私たちのロンカインは素朴な田舎町ですが、人々の温かい人情と、果実の溢れんばかりの甘さは、いつでもあなた
を優しく迎えてくれます。フルーツが最も輝く季節に、ぜひ遊びに来てくださいね。お待ちしています!

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